ゆるゆ会

詩、小説。もそもそと書きます。

8月16日

テーブルの上がステーキ、ハンバーグ、ラムチョップ、ポークジンジャー、タンドリーチキンといった多種多様な肉料理で埋め尽くされていく様は正に圧巻で、それこそどこかの王宮に住む娘が気ままに食べたいものをコックに作らせているようだった。

続きを読む

2日目

久藤家はね、呪われているんだよ。

そのように祖母から聞いたのは私が6つの時だ。

 

今にして思えば、子供にそのような話をする祖母は精神的に

どこかおかしかったのかもしれない。

常に上の空で、かと思えば急に家の中を徘徊し、

やれ床が汚い、やれ庭の手入れが行き届いていないと悪態をついていた祖母は、

家族皆に疎まれていた。

そんな祖母と、私だけが毎日会話をしていた。

祖母は私にだけ優しく接してくれていた。

 

小学校から帰ると私は決まって祖母の部屋に遊びに行った。

玄関を上がり、右の部屋を通り縁側へと出て、障子を3つ通りすぎ、
家の角にある4畳ほどの狭い部屋が祖母の部屋だった。

祖母は、壁に掛けている亡くなった祖父の写真を眺めていて、

私が部屋に入ってくると決まって、

あんたはおじいちゃんの子供の頃とそっくりだねぇ、と微笑みながら言った。

その後は、写真を眺めるのをやめ、代わりに私の顔を見つめながら昔話をしてくれた。

私はその昔話が大好きだった。

時には同じ話を何度も聞いたが、私は嬉々として祖母の話を聞いた。

 

そんなある日の事だ。

いつものように祖母の部屋へ行くと、祖母の様子がいつもと違っていた。

祖父の写真を壁掛けから外し、悲しそうに写真を抱きながら椅子に腰掛けていた。

f:id:yugen-ya01:20160815013048j:plain

今日は、いつもと違う話をしようかねぇ。

祖母はそう口を開き、話を続けた。

1日目

先ほど妻より貰ったコップが汗をかいている。

湿気を含んだ部屋の温度は夜といえど、30度近い。

私自身もコップに負けず劣らず汗をかいており、今頃になって無性に汗が気になり始めた。

妻がコップと一緒に持ってきたタオルで顔をぬぐい、少しぬるくなった麦茶を飲み干す。

ふと、机の上に貼り付けたカレンダーに目を向ける。

先月までぎっしり詰まっていた予定はどこへ行ったのか、

代わりに昨日までバツ印が刻まれていた。

私は苦笑した。

カレンダーは、とある事情で今月より友人のものを拝借することになったのだが、

彼と私とでは予定の扱い方に差があるようだ。

 

苦笑しながら、腰掛けていた椅子を回転させる。

1箇所で風を受け続けるのは身体に悪いのよ、と妻が言いながら去っていた後に、

ぐるんぐるんと首を回すようになった扇風機が笑っているように見えた。