2日目
久藤家はね、呪われているんだよ。
そのように祖母から聞いたのは私が6つの時だ。
今にして思えば、子供にそのような話をする祖母は精神的に
どこかおかしかったのかもしれない。
常に上の空で、かと思えば急に家の中を徘徊し、
やれ床が汚い、やれ庭の手入れが行き届いていないと悪態をついていた祖母は、
家族皆に疎まれていた。
そんな祖母と、私だけが毎日会話をしていた。
祖母は私にだけ優しく接してくれていた。
小学校から帰ると私は決まって祖母の部屋に遊びに行った。
玄関を上がり、右の部屋を通り縁側へと出て、障子を3つ通りすぎ、
家の角にある4畳ほどの狭い部屋が祖母の部屋だった。
祖母は、壁に掛けている亡くなった祖父の写真を眺めていて、
私が部屋に入ってくると決まって、
あんたはおじいちゃんの子供の頃とそっくりだねぇ、と微笑みながら言った。
その後は、写真を眺めるのをやめ、代わりに私の顔を見つめながら昔話をしてくれた。
私はその昔話が大好きだった。
時には同じ話を何度も聞いたが、私は嬉々として祖母の話を聞いた。
そんなある日の事だ。
いつものように祖母の部屋へ行くと、祖母の様子がいつもと違っていた。
祖父の写真を壁掛けから外し、悲しそうに写真を抱きながら椅子に腰掛けていた。
今日は、いつもと違う話をしようかねぇ。
祖母はそう口を開き、話を続けた。